最近はどの書店でも、「ノウハウ本」を謳っている本が溢れかえっています。読んで字のごとく、know-how本です。「方法を知る」ということですね。
ですがそのノウハウ、本当に役に立ちますか? 断言しますが、ノウハウ本は役に立ちません。だれもが成功できるノウハウなんて、ありはしないのです。
ノウハウ本が役に立たない3つの理由
ノウハウ本といっても種類はさまざま。『プログラミングの基礎知識』『宅検合格』などの、専門知識によって裏づけされたノウハウ本は役に立つでしょう。
ですが、『ネットで月10万円稼ぐ方法』や『内定を得るためにすべき10のこと』などが「ノウハウ本」として我が物顔で書店で幅をきかせているのを見ると、思わずため息をつきたくなります。
「ノウハウ本なんて役に立たないのに……」
1.ノウハウは他人と共用するものではない
大前提として理解しなくてはならないのが、ノウハウは本来大衆向けではないということです。ノウハウは「専門的な技術や知識の蓄積」という意味です。(参考:ノウハウ(のうはう)とは - コトバンク)
つまりノウハウ本は、なにかの専門分野に詳しい成功者が、これまでの軌跡を書いているのです。そこには筆者の考え方ややり方が、多大に影響しています。
だれにでも通用して、みんな同じ成果を出せるもの。それはノウハウではなく、マニュアルと呼ばれるものです。
マニュアル本が「みんなが同じ成果を出せるようにするための取扱説明書」だとしたら、ノウハウ本は「積み重ねた専門技術や知識の解説」と言えます。
ノウハウは、自らの技術や知識の積み重ねによって築いたものです。そもそも、他人と共有するものではないのです。共有する前提でだれにでも同じ結果が出せるように整えたものは、ノウハウではなくマニュアルと言うべきです。
マニュアル本であれば、一般化すればするほどわかりやすくなります。ですが専門知識を前提としているノウハウ本は、真似しやすいように一般化すればするほど、ありふれた浅いノウハウになります。
逆に専門的に特化しすぎれば、読む人を選び、ごく一部の人にしか役に立たない内容となります。
どのみちたいした役には立ちません。
2.「まずは真似から」は非生産的
成功者の真似をすることが大正義だと思い込んでいる人がいます。とりあえずやってみるのではなく、とりあえず真似をするというタイプの人です。そういう人は他人の答えを丸写しする前提の姿勢なので、ノウハウ本に頼りがちです。
「まずは真似から」という人は、他人の答えが正しく、自分に最適かどうかちゃんと考えているのでしょうか。
ノウハウ本というのは、他人の専門知識や技術です。『スピード出世で取締役に! 仕事ができるようになるノウハウ』などがその最たるもので、個人の資質や職業、職場などに大きく左右されます。
それなのに、「まずは真似から」とノウハウ本を妄信する人がいます。ノウハウ本の大前提である、「大衆向けではない」ということを理解していないのです。
ノウハウとは、特定分野の専門知識や技術が書かれている本のことを差します。労働心理学のプロですらない、「スピード出世した人」がどんな専門知識と技術を持ち合わせているのでしょうか。
他人の成功自慢記録をありがたがって頼りきる時点で、成功から程遠い場所にいることに気づきましょう。
3.試行錯誤してこそ意味がある
心の底から身につけたいと思う技術は、自分で試行錯誤して習得すべきです。ノウハウ本では、成功への最短ルートを示します。
ノウハウ本に頼るということは、ただ他人が苦労して出した答えを丸写しするということです。それも、自分にとって正しいかわからない答えを。
本来専門技術や知識の習得というのは、数え切れない試行錯誤があってこそです。ですがその無数の失敗は書かず、成功した結果のみを提示します。
それは、数学の公式を丸暗記しているようなものです。その公式がなぜ導き出されたかを理解せず、その過程がないので正しいかもわからない。それなのに、無条件に他人の答えを丸写ししようとする。これではノウハウ本が役に立つわけがありません。
ノウハウ本の価値とは?
ではノウハウ本はまったく価値がないのか。そうは思っていません。「ノウハウ本に頼れば筆者と同じ結果が出せる」と妄信して真似をする人に、「そうではないよ」と伝えたいだけです。ノウハウ本の価値がないとはいいません。
ではどういう時にノウハウ本は価値があるのか。それは、専門知識や技術といった本来の意味でのノウハウを得られる場合と、筆者の伝記として楽しむ場合です。
ノウハウを得られるノウハウ本
本当に専門的で実用的なノウハウ本ならば、学術書として役に立ちます。「プログラミングが正常に作動しない場合のチェック項目」や、「2016年度○○検定問題××の解き方」といった内容です。
そういったものは、それに関する知識が必要になったとき、辞書のように使うことが出来ます。逆に言えば、そのように使うことができない、当たり障りのない知識や技術しか書かれていないノウハウ本には価値がありません。
筆者の伝記としてノウハウ本を楽しむ
専門的でもなければ一般化したマニュアルともいえない、個人の経験や意見に基づくノウハウ本が多く出回っています。そういうものはたいして役に立ちません。同じ能力を持っておらず、同じ環境に身を置いていないからです。
ではそういうノウハウ本はどうやって役立てるべきなのか。それは、筆者の伝記として読むことです。
筆者の技術や経験を盗むのではなく、筆者がなぜ、どういう考えでそうしたのか。そういう心構えを学ぶのです。
『アフィリエイトで月100万稼ぐ方法』を読んで、筆者とまったく同じ方法でまったく同じ結果を出せる可能性は低いです。それならば、なぜ筆者がアフィリエイトで成功したのかを分析してみましょう。
どういう考えでアフィリエイト記事を書いているのか? なぜこの人のアフィリエイトは成功したのか? そういう目線で、伝記として楽しむのです。一般化できないようなテーマの場合は、このようにノウハウ本を楽しむことも可能です。
ノウハウ本に惑わされず自分のノウハウを確立せよ
ノウハウと聞けば、「それを学べばうまくいく」と思いがちですが、そうではありません。『仕事ができるようになるノウハウ』などというのは、そもそも専門知識や技術が必要な内容ではないので、ノウハウですらありません。
そんな言葉に踊らされ、役に立たない成功自慢を読み、それを猿真似したところで、得られるものは「そんなに簡単じゃないんだな」という感想くらいでしょう。それでは時間のムダです。それならば自分で試行錯誤していた方がよっぽど有意義です。
「ノウハウ本」という響きのいい言葉に騙されてはいけません。自分のための技術や知識は、自分で確立していくものなのです。
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