ドイツ在住のわたしが「EUは限界」だと思う3つの理由

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イギリスはEU離脱に舵をきることになりそうですね。難民政策といい、そろそろEUの限界が見えてきたって感じです。

よく、「ドイツは一人勝ち状態」などと言われますが、本当にそうでしょうか。恩恵を得ているのはたしかだけど、その分煮え湯も飲まされていますよ。

 

ドイツ在住のわたしとしては、「EUは限界」だと思うわけですが、今日はその理由を説明します。

 

※2017年2月12日追記

イギリスの離脱が決まりました。今年はEU内でいくつか選挙があるので、その結果次第ではヨーロッパの行く末が大きく変化しそうです。

 

EUの限界は近い

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EU圏内のドイツに住んでいますが、EUの限界を感じています。わたしは学者じゃないので、EU事情に詳しい学者さんたちにはおよびません。

 

とはいえ、わたしが「もう限界だろうな」と思うには、ちゃんと3つの理由があります。

 

 1:EU内の移動の自由が、もう限界

シェンゲン協定といちいちわけるのが面倒なので、もうEUってことにしちゃいます。

 

EU内は人の移動が自由。わたしはドイツでビザを取得しましたが、そのビザでほかのEU国内に住むことができます。これってEUの国にとっては、メリットでもデメリットでもありますよね。

 

国としては、優秀な人が入ってきてくれるかもしれない。その反面、出て行ってしまうかもしれない。関税がない分、輸出に強い国は有利だけど、他国から良いものが安く入ってくる。移動の自由は、メリットとデメリットが表裏一体です。

 

人が他国を利用して流入する

移動が自由、ということは、とある国でビザが取れたら、条件なしで他国への移住ができる、ということです。

 

アフリカ系の友人が結婚する時、ドイツではビザが下りないので、比較的規制がゆるいノルウェーで婚約届けをだしました。ノルウェーはシェンゲン協定内だからね。

 

でもそれがアリなら、みんなうまく「ビザ規制」をかいくぐるようになりますよね。どこかでビザをとって、自分に都合のいい国へ行く。合法です。

 

ドイツにも、EU各国から職を求めて渡独した人たちがいます。ルームシェアしていた人のひとりは、スペインから仕事を求めてドイツへやってきていました。そういうことが起こります。当然です。

 

国力がちがう国たちが統合してひとつになる、ということは、「移動の自由」の点でいえば、国力がある国にお呼びでない人達が入ってくるということになります。これって収拾つかないじゃんね。

 

EUのビザシステムは限界

移動の自由のおかげで、国をまたいでの通勤や通学、輸送が楽になりました。でも便利なものには必ず、裏を返した悪い側面があるものです。

 

移動の自由、という可能性のおかげで、本来だったらはじかれていた人たちが流入することになりました。もはやビザの役割を果たしていません。

 

EUにとどまるかどうかはビザで規制できるけど、EU内のどこにとどまるかは、その人の自由。それなのに、ビザはそれぞれの国の管理。この矛盾が歪みを生みます。

 

ないとは思うけど、どこかの国が「条件ゆるゆるでビザ発行しますよ~★」っていったら終わり。EU内に「本来はビザが取得できなかった人達」がなだれこんできます。

 

移民問題が限界を露呈させた

移民、難民政策は、それぞれの国がやっていることです。でもどこかの国が受け入れれば、EU内の移動は自由なわけです。いろいろな規制を設けてはいますが。

 

ハンガリーやイタリアなんかは、ドイツや北欧を目指す難民たちの足がかりにされてパニックに陥りました。経済力の低い国からすれば、難民の受け入れは死活問題です。

 

 EUの参加国が足並みをそろえることはムリです。自分の国の利益を守りたいんですから。

 

国によっては「受け入れ拒否」が利益になるし、場合によっては「受け入れ」がメリットになることもある。でも一度どこかの国が受け入れれば、あとは移動は自由。こりゃあモメますって。

 

 

 

EUの法律がもう限界

ちょっとまじめなお話。

公法(憲法・行政法・EU法・国際法など)の授業を受けていたとき、疑問に思ったEUの法律の仕組みについて。

 

EUの法律は詭弁

EU法っていうのは、国の憲法よりも上に位置します。ピラミッドの頂点です。授業でそう習ったので、「もしドイツがEU法とはちがうやり方にしたいって思ったらどうなるのさ」と思って、教授に聞きに行きました。

 

「EU法っていうのは、具体的な事例のためにあるんだ。たとえば国際問題とかね。その国内部の問題は、その国の法律によって裁かれる。そのとき、EU法っていうのは存在してはいるけど、棚上げすることになっているんだ」とのこと。

 

……いやぜんぜん納得できないんだけど??

 

たとえばドイツが、死刑を導入したとしましょう。実際は死刑制度の導入はEUにいる限りムリだとは思いますが、たとえばの話ね。EUは人権にうるさいので、死刑撤廃の方針を出しています。それでもドイツは、死刑を導入したい。

 

そうしたら、EUの「死刑はなし!」っていう決まりは棚上げ。ドイツ国内の事件に関しては、ドイツは死刑が執行できる。

 

でも「死刑撤廃」っていうEUの決まりは存在しているから、たとえばドイツ人がほかのEUの国で100回殺人を犯したとしても、それは「ドイツ国内の犯罪」ではないから国際裁判、つまりEUの方針に従うことになる。ってことは死刑にはできない。

 

という解釈であっていると思いますが、まちがってたら恥ずかしいので指摘してください!!!!

 

言いたいことはわからなくはないけど、めっちゃ詭弁ですよね! なんかムリにつじつま合わせている感じが満載!

 

EU参加国すべてを同じ法律で裁くのはムリ

EUの盟主といえば、ドイツですよね。あとはフランス、イギリスなど。イギリスは独特な立ち位置ですが。参加国はそれぞれの特徴があって、経済力もちがえば、EUに及ぼす影響力もちがいます。

 

国力が低い小国には、いろいろと不公平です。 不公平でもメリットがあるから参加するわけですが、そこも腑に落ちません。

 

学校でも、クラス内に勉強ができる人とできない人がいますよね。その人たちが一緒に「どうやったら勉強できるか」と議論していてもしょうがないわけです。

幼稚なたとえだけど、レベルが違うのに同じグループにいたら、軋轢が生じるのは当然です。

 

バラエティ豊かな参加国を、同じ決まり、ルールで縛り付けるのって、かなりムリがあると思います。

 

だからこそ「国内の事例のときは、EUの法律は棚上げしてもいいよ! でも存在はしてるんだからね!!」とかっていうムリな理論が出来上がった。

なんかもう、法律としてどうなの? ってレベルで限界を感じます。

 

 

 

ちっとも民主的じゃなくて笑える

EUは、「民主的に!」というスローガンを掲げているくせに、ちっとも民主的じゃないんです。

 

欧州議会は、参加国の人口に比例して、議席が決まります。EUで一番人口が多いドイツが、一番多い議席を持っています。96席。751議席のうち、96席がドイツの取り分。

で、ルクセンブルク、マルタ、キプロス、エストニアは6議席しかない。いやいや6って。

 

人口に比例してるから、理論としてはすっきりするけど、不平等感はぬぐえないですね。

 

さらに欧州の決議の仕方も、ぜんぜん民主的じゃない。

 

欧州議会は、EU国民から直接選挙で選ばれます。それなのに、EUの決議の際、欧州議会はあんまり権限がない。国民の直接選挙で選ばれたにもかかわらず。おかしくない?

 

で、EUの内閣ともいえる欧州委員会は、国民からは直接は選ばれません。

一番権力をもっている組織に、EU市民が直接介入できないって「民主的」な視点からいえばどーなのよ。

 

そう考えると、民主主義を謳っている理想と、機能可能でなくてはいけないという現実が乖離しているように思えます。

 

EUという概念が限界

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EUのおおもとになったECSCの理念は、かんたんに言えば「ドイツの足を引っ張ろうぜ」ですからね。

 

ドイツがあまりに強すぎて、ほかのヨーロッパ諸国はどうにもできなかった。だからドイツを監視しようぜ、ということです。 

それから発展し続け、やっぱりドイツがヨーロッパの盟主になってるんだから、なんかやるせないですね……。

 

まとまるために必要なものが何もない

国としてまとまるために必要なものは、「言語」「文化」「歴史」だと思うんです。

 

もちろん例外はたくさんあるけど、国としてまとまるためには、同じ言語での意思疎通が可能であること、同じ文化背景による同じ価値観を共有していること、その国が培ってきたものを理解して受け継ぐこと。これが大切です。

 

でもEUにとって、共有できる価値観なんていうのは、たかが知れています。だから具体的な価値観じゃなくて、「ヨーロッパ」としてまとまるわけですが、どこからどこまでがヨーロッパなんでしょう。

 

東欧はもともとロシアの仲間でしたが、ヨーロッパに含まれていますよね。じゃあロシアは? トルコは? ヨーロッパ、なんてゆるーいくくりじゃ、一致団結はムリなんじゃないですかね。

 

EUは国にはなれないし、ならない

 ほとんど国のような機能をしているEUですが、EUは決して国にはなりません。国の条件は「主権」「国土」「国民」ですが、EUは主権を持っていません。

 

主権はあくまでも参加国がみずから持っているもので、その一部をEUに「委託」する形で統合しています。

 

……やっぱり詭弁じゃない?

 

EUはいま統合してるけど、最終目標はなんなの? ひとつの連合国家のようにまとまりたいんじゃないの? だったら国になれば? っていうかまとまってどうしたいの?

 

なんか納得いかないことばっかり。まとまりたいけど、主権は放棄したくない。だったら関税撤廃とかだけでよかったんじゃないの?

これ以上統合したいなら、もはや国になるのと変わらないじゃん。っていうか統合を推し進めてどうしたいのさ。

 

ここらへんの「不明瞭さ」が、EUという概念の根本的な「限界」をあらわしているような気がします。

 

 EUはもう限界

そもそも、大きさや考え方がちがういくつもの国が、「足並み揃えて」なんていうのはムリだったんじゃないでしょうか。

 

戦争を起こさないために連帯感を持つ、というのは大切な考えだと思います。が、「それでどうするの?」って感じ。これからどうなりたいのか、よくわからないんですよね。

 

EUにとって、なにをもって発展、進歩というんでしょうか。

 

なんかもう、いろいろ限界だと思います。だってドイツ人とフランス人とイギリス人ってだけでも仲良くできなさそうなのに、そこにさらにいろんな国が加わるなんて、ムリですよ。

 

なんかまじめに語ってみたけど、EUの限界は近いと思います。難民問題でそれが露骨になってしまった感じ。へんに主権を一部委託、なんて形をとらないで、経済域くらいの連帯感じゃダメだったのかなぁ、と思います。

 

さて、これからEUはどんな発展を遂げるのでしょうか。見ものですね。

 

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