おもてなし。五輪招致のときに使われた言葉で、「日本らしい慎ましやかな気持ち」と、「他人のために尽力する精神」をあらわしています。
ヨソから人が来るんですから、「いらっしゃい! よく来たね!」って気持ちは大切。「うわぁ……外国人いっぱいきてんじゃんw」ってノリだと、「もう来たくない」って思わせてしまいますもんね。だから、おもてなしは大切です。
でも、日本のおもてなしって、ちょっとずれてる気がするんですよね。それを自慢げに「おもてなし精神★」って言ってると、ちょっとダサイです。
日本が考えて準備しているおもてなしは、正直ただの過剰なサービスです。ちょっとずれてます。
ちょっとずれてる日本の「おもてなし」
どんなおもてなしをしてるのかなーと『オリンピック・パラリンピックおもてなしグループ』(http://www.soumu.go.jp/main_content/000295307.pdf)のサイトを見てみました。
が、なーんかちがうと思うんですよね。「え、そこにお金と時間かける?」みたいな。結局のところ、日本に来る外国人が望んでいるモノがわかってない人たちが、「こうすればいいんだ!」ってやってるだけです。全然わかってない。
ずれてるおもてなし:日本の魅力を発信
日本の魅力っていうのはいろいろあるんだろうけど、あらかた知られてますからねぇ。オタク文化や高層ビル、伝統的な日本家屋と日本庭園。それくらいみんな知ってます。
というか、観光資源って国にとってすごく大切なのに、いままでたいした対策してなかったのか? って感じです。ドイツ語で「日本 旅行」とざっと調べてみると、個人ページか飛行機予約しかひっかかりません。
あと、1ページ目に「福島を訪れる際」って外務省のページが出てきますね。わからなくはないけど、なんか楽しげなサイトがないんですよね。
それって、むしろ「いままでやってなかったの?」レベルですよ。英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、中国語、韓国語、アラビア語、ロシア語で見れる公的な日本の観光地まとめ、みたいなのって、すでに作っておくべきじゃ?
しかもこれって、商業的戦略であって、おもてなしではないですからね。これをおもてなしって言うのはちょっと押し付けがましいですよ。
ずれてるおもてなし:多言語字幕サービス
スマートテレビを、多言語の字幕で見れるようにしたいらしいです。が、無意味です。必要ない。
自分が旅行に行ったからって、テレビを見ることを期待しますか? しませんよね? で、見るためにインターネットが必要なら、見るのは主にホテル内。それなら自国の番組チェックしません? わざわざ字幕がある日本の放送を見ますか?
あって困るものでもないけど、ふつうにいらないですよ。それだったら外国の放送を、スマートテレビのネット上で流せばいいだけ。あえて字幕でがんばる必要はない。ドイツ人なら、日本の字幕つき番組より、ドイツの放送を見れたほうがいいです。
なーんかずれてるんですよねぇ。
ずれてるおもてなし:音声翻訳システム
これ、めちゃくちゃ恥ずかしいです。アプリを使って翻訳、言葉の壁がなくなる――って考え方なんですけど、恥ずかしいですよ。
基本的に、日本人が英語が話せないことを知っている人が多いし、知らなくてもどこのサイトでもよく書いてます。なので、完璧な英語の対応を求められてはいません。
むしろ、「カタコトでも一生懸命説明してくれた」という思い出を大切にしている外国人も多いのです。
それを、機械でつないでどうするんですか。スマホでやりあうって、情緒のカケラもない。相手だってこっちに合わせるつもりでくるんだから、英語ができないなら、身振り手振りで伝えてくれますよ。それこそが異文化交流でしょ。
このテーマに関して、「英語を話す機会を増やそう」ではなく、「それができる機械を作ろう!」っていうのがまたね。技術アピール? いやいや。
自分がドイツに行って、毎回スマホやらで翻訳されたらうっとおしくない? すごいよそ者扱いされてるって思わない? 意思疎通ができてても、ちゃんとコミュニケーションになってなくない?
ずれてるおもてなし:地震災害の対策
災害時に避難経路がわかるようにしよう! ってのもさぁ。いままでだって、少数ながら外国人はいたわけじゃない。オリンピックだからどうこうじゃないですよね。
地震災害の対策、とか言ってるけど、フクシマはどうすんのさ。「日本から来た」「フクシマは大丈夫なの?」ってしょっちゅう言われますよ。日本国内よりも注目されてるんです。だからまず、フクシマについて理解を求めないと。
原発についてもうやむや、東北の復興より東京の発展優先にしてもさ。どうせなら東北で開催すればよかったのに。って素人のわたしは思っちゃうんですよね。
フクシマは日本が思っている以上に世界に知られているので、地震対策を宣伝するくらいなら、フクシマについてちゃんとわかるように解説しないとね。大事なことをうやむやにして、なにがおもてなしだって話です。
日本のおもてなしは世界基準じゃない
これを見てみると、「需要をかんちがいしてる」感じがいなめないんです。たとえば、「英語メニューを作ろう」とか、「標識も英語をつけよう」とか。いまさらかい。
英語教育に力を入れる必要もありません。
日本人は経験がないだけで、英語の知識はあります。日本人が外国人とコミュニケーション取れなすぎ なのが問題であって、知識の問題ではありません。
案内ボランティアとかね。道行く人に聞けばいいじゃない。過剰に「快適にしてあげよう」ってのはおごりですよ。不便でも、それがいい思い出であれば、いい旅行になります。
それよりも、東京の人を分散させたり、満員電車って状況を改善させたり、喫煙できる場所を増やしたり、デイビットカードが使えるようにしたり、の方が大切ですよ。もちろん、バリアフリーも。
いまどき、「ベビーカー乗って電車はダメ!」なんて言ってる先進国ですからわからないでしょうけど、日本はそういうマイノリティをはじきます。そういう考え方を変えたりしなきゃダメでしょ。
それなのに、言語対策とかやってる。テレビが見れなくても困らないけど、ベビーカーで電車乗れないと困る人がいるでしょ。おもてなしってそういうことじゃないの。
おもてなし、っていうのは、過剰なサービスのことじゃありません。「困らないように」快適な空間を作るんです。他人の気持ちになって。そしたら、テレビの字幕よりもバリアフリー方が大切。そんなの考えればわかります。
もうちょっと国際的な需要を理解してから、「おもてなし」って言ったほうがいいですね。