クラウド出産ファンディングはなぜ炎上したのか

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大学4年生のイシイさんという方が、「彼女が妊娠して学生結婚、出産費用がないのでクラウドファンディングをします!」と表明し、無事炎上しております。

 

もう長いこと個人に言及する記事は書いてなかったんですが、今回については個人的に腹が立っているので、思いのまま書き綴っていこうと思います。

 

出産費用をクラウドファンディング

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出産にかかる総費用は平均50万円と言われていますが、僕のアルバイト代だけではどうしても出産資金が足りず、困窮した生活を強いられています。

経済的に厳しくても出産ができる社会を証明し、みんなでこの子を育てていきたい!

出典:経済的に厳しくても出産ができる社会を証明し、みんなでこの子を育てていきたい!

 

だからクラウドファウディングでお金を集めます、という趣旨です。

それ自体は「そうか、学生結婚&出産って大変なんだなぁ」と思いますが、「おかしくね?」という部分が指摘され、無事炎上状態に。

 

それに対するコメントがこんな感じ↓

クラウドファンディングを「お金集めのツール」としてしか見ていない人も多いのですが、クラウドファンディングのいいところって、「周りの人を巻き込める」点なんですよね。

プロジェクトの下書きページにも書いた通り、みんなでこの子を育てていきたいんです。多くの人に待ち望まれて生まれてくるなんて、最高じゃないですか。親として僕も嬉しいですよ、本当にそんなことになれば。

支援したプロジェクトって自分ごとのように気になるんです。ひとたび支援すればもうこの子の「ソーシャル上の親」となります。
出典:クラウドファンディングで出産費用を募ることは「悪」なのか? | でこぼこあーと

 

「ソーシャル上の親」という言葉が生理的に受け付けないのですが、イシイさんとしては、「社会的に意義のあること」だし、「クラファンという手段があるんだからそれを使って何が悪い」という認識のようです。

 

余計なことを書いて無事炎上

 

いまの状況(具体的な支出入)、4月から受け取る給料の使い道(予定)、給付金の利用……そういう事情を丁寧に説明すれば、「若いと大変だよな。ま、ちょっと先輩パパから出産祝いとして寄付するか」って思う人はたくさんいるはずです。

 

いまの時代、「カネないやつは子どもを産むな」っていう人の方が時代遅れですから。

 

それなのに、余計なこと書いて自爆してる。

 

バイトの方が楽って書いたり、クラファンの方が稼げるって書いたり……。「他人のカネを当てにしてるのになぜちょっと偉そうなのか」という疑問は、多くの人が持ったのではないでしょうか。

 

クラウドファンディングは寄付ではない

わたしはクラウドファンディングを、「出資」という意味で理解しています。だから「リターン」が設定されているんです。

3000円出資するからタダで会員になれるだとか、1万円出資すれば1回会ってくれるとかね。

 

 

「リターンありの出資」であれば、それは取引だから堂々としてればいいんです。でもクソみたいなリターンしか用意できないのなら、もっと低姿勢になるのが当然なんじゃないの?って思います。

 

ページを見ればわかりますが、まともなリターンはありません。「出産祝いとして寄付」「ベビー用品代として寄付」とかね。

強いていうなら、妊娠中の奥さんの手書きのイラスト(3000円)と、PR記事(10000円)とかですかね。彼のブログのPR記事が1万円に見合うほど読まれるとは思いませんが……。

 

「病気の子どもたちへの寄付」「震災復興寄付」などでは、ただ純粋に力になりたい人がお金を出しますよね。でもその場合、支援を「お願い」する立場になります。

「経済力によって病気が治らないのはおかしいですよね?だからお金をください」なんて人はいません。

 

まともなリターンを用意できないなら、「寄付」を呼びかければよかったのに。

「寄付を募る」という形なら、「使わなくなったベビー服を寄付します」って人も現れたでしょう。

 

現代で「みんなで子育て」はハイリスクすぎる

昔だったら、地域みんなで子育てってのは普通でした。でもこのネット社会で、「みんなで子育て」はハイリスクすぎます。

 

写真や動画なんかも含む子どもの成長記録を、逐一赤の他人とシェア。考えるだけでもゾっとします。

オーストリアでは、「赤ちゃんの時の写真を親がネットに公開してる」ってことで、子どもが親を訴えたことがありましたね。

 

まぁ名前なんかも公開するんでしょうし、お散歩の風景を公開したら住所もさっくり特定されそうですね。そういうリスクは考えませんか?

 

親の価値観はどうであれ、これだけ批判されているのに「子どもにとってもいいことだ!」と思い込むのは、すでに毒親というものです。

 

わたしが親に「出産のときお金がなかったから、『みんなで育てようね』って見知らぬ他人からお金をもらって、その後みんなで君を見守ってたんだよ」って言われたら、秒で縁を切ります。

 

イシイさんは4月から社会人。奥さんはフリーター。それで顔出しして炎上するって、いばらの道を進みたい系男子なのかな……。

 

「社会」を相手するなら相応の覚悟を

これが、「お金が足らないので助けてください」なら、まわりの人の反応も、160°くらい変わったと思います。

でもイシイさんは、クラファンページで「社会に対して伝えたいことがある」と明記しています。

 

「◯◯であるべき」とか「常識的に〜◯◯」とか、論じてくる人がいますが、そんなに深く倫理観語らなくても。

日本初、クラウドファンディングでの出産。

素直に「おもしろいなー」と思えば支援、けしからんと思えば無視でいいじゃないですか。

出典:クラウドファンディングで出産費用を募ることは「悪」なのか? | でこぼこあーと

 

「社会」を相手にしておきながら、「批判するなら無視してください」って調子良すぎじゃないですか? その言い分が通るのは、個人的な話だけだよ?

 

「社会に証明してやる」と言っておきながら、「まぁそんなに深く考えんなよ!」って社会ナメてんの?

 

 

 

クラウド出産ファンディングの是非

なぜ久しぶりに個人バッシングの記事を書いたのか。それは、腹が立ったからです。

 

子どもができて結婚しました。学生でお金がありません。助けてください。

そういう人をはじいてしまったら、日本は少子化が加速するだけです。だから多くの人は、そういう人には支援をして子どもを産んでもらう必要があるとは思ってるはず。

 

だから、子育てのために他人から寄付を募ること自体には反対しません。

むしろそうやって「経済的に余裕がない親の現実」を伝えてほしいとも思います。

 

でもさぁ、もっと自分の経済状況を書いて、給付金とかも調べつくして、それで「リアルな若者の子育て事情」として共感を呼ぶ方法はいくらでもあるじゃないですか。

それこそイシイさんが目指す「社会に一石投じること」になるんじゃないの。

 

なのにさぁ、なんでこんな感じにしちゃうのよ……。

 

以前、国会議員の宮崎さんが、男性議員としてはじめて育児休暇取得を決意しました。すごい画期的で応援してたんですよ。そしたら不倫スキャンダルで辞職。

当然のことながら、「イクメンアピールしといて不倫かよ」と叩かれ、男性議員の育休の話はうやむやになりましたね。

 

今回のクラファンも、似たような匂いがします。

 

画期的であり、意義もあるでしょう。それなのに、なぜこんな感じでやってしまったのか。

「日本初」「社会的意義」を持ち出すんなら、後続の手本とならなきゃいけないのに……。

 

基本的に、「助けてほしい」って言う人に「もっとがんばれよ」って言うのはキライです。その人がつらいなら理解して、できれば手を差し伸べたいと思ってます。

でもさぁ、これはさすがにお花畑すぎじゃね? 頭のなかにコスモスでも詰まってんの?

 

社会が考えていくべき重要なテーマなのに、いろいろ雑すぎて炎上しちゃったじゃん。

 

ちがう人がちがうやり方で「日本初」の出産クラファンに挑戦したら、大きな議論になって流行語大賞に選ばれて、国が動いたりNPOが立ち上がったりとかするかもしれなかったのに!!

 

そういうチャンスをふいにしてこういうかたちで炎上させたのは、罪深いと思うのでした。こちらからは以上です。

 

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