「海外適性は行ってみないとわからない」という罠
わたしが「ドイツに留学する!」と言ったとき、止める人はだれもいませんでした。ふだんからそこそこ挙動がおかしく、四六時中「変わってる」と言われていたので、「日本じゃお前は無理だろ」というのが総意だったようです。どうもありがとうございます。
お兄ちゃんの影響で「海外行ってみたい!」という憧れがあったし、まわりのリアクションもそこそこ追い風、教授のおかげで返済不要の奨学金つきの留学。
諸事情あって留学3ヶ月前に突然ふってわいた話でしたが、留学を決めてからはウッキウキでした。
2012年の夏にドイツにわたり、目一杯ドイツを楽しんだ1年間。「海外」に住んでいることで戸惑うことはあったけれど、その困惑すら楽しくて、なんかもうとにかく楽しかった(語彙力)。
しかし、はしゃぎまくるわたしとはちがい、海外で潰れた留学生もいました。
海外生活に耐え切れなくなって一時帰国したり、思うような生活を送れずにホームシックになって帰国したり、勉強へのモチベーションを失って授業に出ず放浪したり。
わたしは幸い海外適性があったけど、海外適性って実際住んでみないとわかんないんだからつらいよなぁ~なんて思ったものです。
海外適性を決める3つの要素とは
で、ふと思ったのが、「海外適性」という言葉。これなんでしょうね。
海外といってもいろいろありますから、ドイツで求められる適性と中国で求められる適性はちがいます。
ただ、どの国でも母国を出る以上いえるのは、「言語的ハンデをどうにかするサバイバル能力」、「自分の常識や価値観が破壊される戸惑いと不快さへの許容」、「ないものは諦める」ちからが必要だということ。
まずは言語的ハンデ。これをねじ伏せる方法はいろいろで、語学力つけてぶん殴るか、酒と笑顔でうまく乗り切るか、しゃーないと笑って割り切るか……。
とにかく、「伝わらない」というもどかしい思いと自分の無力さに向き合わなきゃいけません。
この「伝わらない」という状態は思っている以上にしんどくて、「わかってもらえない」と孤独感をつのらせたり、「うまく言えない」と引きこもったりする人がいるくらいです。
さらにしんどいのが、いままで疑ったことがない自分のなかの常識や価値観がぶっ壊されること。
自分が当然だと思っていたことが通じない。日常のいたるところで、自分がマイノリティであると自覚させられる。
自分がマイノリティである以上、相手に合わせるしかありません。郷に入りてはってやつ。
これを楽しめる人は「視野が広がって自由になった!」って思えるけど、そうじゃない人は自分の価値観を否定されたようでつらくなってしまいます。
そして大事なないものを諦める割り切り。
電車が時間通りこない。豆腐がない。停電する。ネット環境が最悪。冬は太陽光を拝めない。
環境が変わるのですから、当然「ないもの」が発生します。それを諦められるかどうか。
海外生活に馴染んでいる人は、「なくてもどうにかなる」「ないならないで」と割り切っています。そうしないと常に「足りない」「不便」と不満を抱えることになるから。
この3つは、海外生活に向いているかを決める大きな要素だと思います。単純に水が合わないとか気候が合わないとかもあるけど。
海外移住のモチベーションと海外適性
これを「海外適性」と定義した場合、適性があるかどうかは海外に行ってみなきゃわかりません。
いくら海外移住へのモチベーションが高くとも、自分の語学力に絶望して引きこもることもありうるし、フレンドリーすぎる国民性に馴染めなかったりもする。
ずっとドイツに憧れててようやく留学の切符手にしたけど半年でメンタルやられて帰国した人がいる一方で、親に勧められてなんとなーくドイツに来てめっちゃエンジョイしてた人もいるので、海外適正って行ってみなきゃわかんない。
— 雨宮@『日本人とドイツ人』新潮新書 (@amamiya9901) February 26, 2019
だから「無理なら帰ればいい」くらいの勢いで行ってみればいいと思うよ
高校時代からドイツ語を勉強し、1年も前から留学の切符を手にしてずーっと準備をしていた子も、途中で一時帰国していました。
海外移住するために新卒で就職せずにワーホリでドイツに来るも、現地に馴染めず帰国する人。
さんざん勉強してドイツの大学に入ったのに、語学の壁にはばまれて単位を取れず卒業の見込みもなく諦めて帰国する人。
そういう人、ふつーにいるんですよ。めっちゃ準備して、意気揚々と飛び込んで、でも帰る人。それがいいとか悪いとかじゃなくて、いるんです。事実として。
海外移住へのモチベーションと、実際に移住してうまく馴染んで居場所を見つけられるかってのは、まったくちがう話なんですね。
「背水の陣」海外移住はおすすめしない
海外移住を「生死を賭けた大チャレンジ」だと思って行う人がいます。その覚悟はあっぱれですが、個人的には背水の陣移住はおすすめしません。
海外適性があるかどうかは、行ってみなきゃわからない。それなら、帰る場所はあったほうがいいです。
「無理なら帰ればいいや」と思える場所があれば、それだけ海外移住のハードルは下がります。そっちのほうが精神的にも楽。
海外でがんばろう!という気持ちがあればどうにでもなる……ってわけでもないので、「とりあえず行ってみて無理なら帰る」くらいで飛び込むのがいいんじゃないかなぁ~と思います。
ちなみにわたしは毎年3ヶ月くらい日本に帰ってます。1年の4分の1は日本! それくらいのバランスがちょうどいいかなーって感じ!