「海外旅行」で炎上する若者たち
「ヒッチハイクでアメリカ横断する中学生」がネットでちょっと話題になっています。アメリカは州によってはヒッチハイクが違法であり、子どもひとりで留守番させると親が罰せられたり、学校への送り迎えが必須だったりする国です。
そんなところでヒッチハイクする中学生って……ということで多くの人が止めましたが、本人は実行。
「入国の際口裏合わせしてくれる人募集」というツイートをし、polcaというカンパシステムでお金を集め、クレジットカードを作れない年齢なのでたくさんの現金もって行ったようです。結果、3日後に現地で保護されました(父親が現地まで迎えに行った)。
あと同時に注目されたのがポンチョ系女子の方。こちらは現在削除されていますが、プロフィールにTABIPPO(旅行まとめサイト)があり、メンバーとして参加しているようです。
デリー→アグラの電車で前に座ってたインド人。色々教えてくれて、チャイ奢ってくれて、電車降りたらトゥクトゥク乗ってゲストハウスまで連れて行ってくれた笑 最後にママが作った謎のおカズまでくれて、楽しんでねって去って行った。なんでそんなに優いんやろって涙が止まらなかった。 pic.twitter.com/Fkuz3NgiTY
— すずか@世界一周中ポンチョ系女子 (@tabinidetai_) January 31, 2019
デリー着いてカレー食ってたら話しかけてきて、チャイくれてゲストハウスまで一緒に来て、6時に迎えに行くと言われた。無視して7時ごろ帰ったらゲストハウスの前におって笑 やから飲みに行ったら結構いいやつで、インドのヤバイ文化を教えてくれた。 pic.twitter.com/9WFrQxIztH
— すずか@世界一周中ポンチョ系女子 (@tabinidetai_) January 31, 2019
インドで男性から飲み物をもらい、宿泊先を教えるなんて、想像するだけで卒倒しそうです。同じ気持ちになった人も多いようで、「危なすぎる」「やめておけ」というコメントが殺到しました。
外務省が「強姦が頻発」と公式に書いていて、「レイプ大国」とまで呼ばれる国なのに……。あの凄惨なバス事件で大規模なデモが何度も行われたのに……。
そういえば以前、「フィリピンのスラム街に行って子どもたちに夢を与えたい!」という近大生のお花畑クラウドファンディングも炎上してましたね。
「海外旅行」で炎上状態になる若者をちらほら見かけるので、今回はその理由についてちょっと考えてみます。
情報収集がかんたんな現代社会でなぜしない?
わたしの一番の疑問はこれ。「情報収集がかんたんな現代社会でなぜ無知のまま飛び込むのか」。
ちょっと調べれば、アメリカの多くの州がヒッチハイクを法律で禁じているのもわかりますし、インドでは女性が危険な目に遭う可能性が高いのもわかりますし、スラムがどんな場所なのかもわかります。
グーグル先生に聞けば、5分で危険度がわかるんですよ。それ、なんでしないの?と。
情報社会の現在、海外の様子はすぐに調べられます。海外旅行が身近になったので、「海外ではちゃんと気をつけるべき」という認識も広がっています。それなのになぜ、情報収集を怠るのか。無防備で行くのか。
死者を悪く言うつもりはないけれど、2012年、アイセックの女子大生がルーマニアで命を落としたことがありました。
ルーマニアは治安が悪く、流しのタクシーには絶対に乗ってはいけない国です。正規のタクシーに乗る方法を知っていれば……と思った人も多いのではないでしょうか(現地メディアでも危機意識の欠如を指摘されていました)。
情報収集が簡単だからこそ、「なぜそんなに無防備なんだ!」と思う人が多いのでしょう。わたしもそうです。
危険な行為を止めるのは「大人の責任」
いやね、危険度を理解したうえで行くんならいいんですよ。相応の準備もするんだろうから。
でも、高尾山に登る装備で「エベレスト行くでー!」って言ってる人いたらやばいじゃないですか。まっとうな人間なら止めますよね? 「おー行け行け!」ってカンパなんかしませんよね? だってしんじゃうもんね?
それと同じで、「日本の感覚でちょっと気をつけつつ超危険なことするでー!」っていうのは見過ごせないんですよ。見過ごす=見殺しにするってことになりえるから。後味最悪だよ。目に入らないところでやってくれよ。
ヒッチハイク中学生はカンパでお金集めてましたし、ポンチョ系女子はTABIPPOとあったので、執筆料などをもらっているのかもしれません。スラム街クラファンもちょっとお金集まってました。
そうやって無責任に応援する大人がいるから、「応援されている=やっていいこと」だと思ってしまうんじゃないかなぁ。
スラム街クラファンもそうだけど、現地のことをたいして知らずに飛び込もうとする人を無責任に支援するのはよろしくない。本当にしんじゃうから。忠告を聞くかどうかは本人の自由だけど、あまりにも危ない若者の挑戦を大人たちがチヤホヤするのはダメよ。ましてや金を出すなんて。
— 雨宮@『日本人とドイツ人』新潮新書 (@amamiya9901) February 17, 2019
大人が若者の「命を落とす可能性のある無知な冒険」を応援するのはダメです。
応援するなら、「危険だけど十分に準備した冒険」 にしましょうよ。何ヶ月も準備してガイドつけてトレーニングして詳細な計画立ててエベレスト登るんなら、ちゃんと応援するわ。
ヒッチハイク中学生、滞米17年にもなる日本人男性が初日泊めて送り出したことを知って大変な驚き。
— Summer (@Summer500la) February 15, 2019
よく15歳をLAで知らない人の車に乗せてOKと思えるなぁ...怖すぎるよ。数ブロック先の小学校でさえ、子供だけで行かせられないのに。
運が悪かったら、別れて数時間後に命を落とす可能性もあるのに。
あのアメリカを1人でヒッチハイクしてる中学生の人についてる反応とかみると、日本に住んでるアカウントからは(心配もあるけど)応援とか賞賛が目立つのに、アメリカ在住アカウントからはほとんどが「危険だ心配だ今からでも帰って」なのは、実感とか肌感覚の有無の違いだよね、真剣に耳傾けて欲しい
— tattatyyy👩🔬 (@TATTATyyy) February 12, 2019
危険度を知っていてそれを伝えないのは、見殺しにするのと同じです。だからみんな止める。それが一見「炎上」に見えるのだと思います。
でも実際は、多くの人が血相変えて忠告してるだけです。まじでしぬよ?って。
海外で挑戦するなら「安全」が最優先
ひとつ言うと、こういった若者の海外旅行に苦言を呈す人たちは、若者の挑戦自体を悪く思っているわけではないんです。たぶん。
ただ、「やるならもっと安全にやろうよ! 見てるこっちが怖いわ!」ってくらい無防備だから止めるだけで。
「おーやれやれー!」って言って翌日遺体で見つかったらどうするんですか。気分最悪だわ。だからみんな、余計なお世話だと知りつつ言わずにはいられない。それが、「批判ばっかりされて炎上している」ように見える。
そうじゃないよ! 見殺しにしたら後味悪いし、できるだけ危険は回避してほしいから言わずにはいられないんだよ! まぁぶっちゃけお前がどうなっても関係ないけど、それで「日本人はカモだ」って認識されたら迷惑なんだよ!
ヒッチハイクや田舎に泊まろうとかもそうだけど、他人の好意にタダ乗りすることすることを前提とした旅=赤の他人の心持ち次第で自分の生死すら決まるってことだぞ。そこまでして見知らぬ人と触れ合いたいかね。かけがえのない出会いを求めるより、かけがえのない命を大事にしたほうがいいと思うけど…
— 雨宮@『日本人とドイツ人』新潮新書 (@amamiya9901) February 17, 2019
すべてにおいて、大事なのは「安全」です。「安全」を欠いた挑戦は「無謀」「自殺行為」と言うのです。
いや、それでもやりたいっていうならいいよ。でもいろんな人から批判されるのは覚悟すべきだね。だって無謀だもん。
多くの人に応援してもらいたいのであれば、「万全を期した危険な挑戦」であるべき。そうじゃないのなら、SNSで拡散しないほうがいい。だってそれを見たら、まわりは止めるもの。見殺しにできないもの。なにかあったら後味悪いもの。
「危険」を理由に批判が集まった場合、高確率で「まじでやばい」ので、やめた方がいいです。本当もう、心臓に悪いので、ぜひやめてください。
それでも実行するならせめて、旅を無事に終えた後に発信してください。
ネット上のアドバイスや忠告のほとんどは的外れだとは思いますが、「海外旅行」における「危険だぞ」という声はありがたく聞いておくべきです。無事帰国したいなら。