記事を整理していたところ、「留学」に関する記事が明らかに少ないことに気づきました。なので、ドイツに1年間交換留学したときの話を書いていこうと思います。
まずは、ドイツ留学中のかけがえのない経験について。これらの経験は、いまでもわたしの人生に大きな影響を及ぼしています。
ドイツ留学という経験
わたしは大学在学中、1年間ドイツに留学していました。いわゆる交換留学というやつですね。
実は留学の4ヶ月前まで、大学を卒業したらイギリスの大学に入るつもりで、お金を貯めていました。
それが、ひょんなことから留学の切符を手にし、気がついたらドイツにいた……という感じです。
そんな経緯ではあったけど、1年間という長いようで短い時間のなかで、たくさんの経験をしました。
勉強するだけ伸びるという快感
一番の経験は、「勉強すれば伸びる」というあたりまえのことを、毎日実感したこと。
学校のテストや受験勉強って、ある程度いままでの積み重ねじゃないですか。もちろん勉強したら点が上がるけど、日々の「成長している実感」ってあんまりないんですよね。模試によっては点数が下がることだってあるし。
でも、ドイツ語はそうじゃありません。まったくのゼロからはじめ、単語や文法を丸暗記し、ドイツでドイツ語を使ってみる。
そうすると、ドイツ語で会話できるんです。
いやね、当然だと思うでしょ? ドイツでドイツ語話したら会話できるじゃんって。
でも考えてみてくださいよ。ちょっと前まで、まったく知らなかった言語ですよ。それを使って現地人と会話してるんですよ。超かっこよくないですか、超熱くないですか。
単語を覚えた。次の日使ってみた。通じた。
それだけで、涙が出るほどうれしいんです。「あ、自分レベルあがったな」って。「なにもわからない」から「少しわかる」に、そして「ちゃんとわかる」になる。
勉強すればするだけ、自分が成長していく。その成長を毎日感じられる。この快感は、一生忘れないと思います。
人生初の異文化コミュニケーション
わたしはドイツに留学するまで、外国人の友だちがいたわけでもなければ、国際サークルに入っていたわけでもありませんでした。ほぼ初めての異文化コミュニケーションです。
で、ドイツの学生寮で、とある男の子と話したんです。
アラブ系の見た目の人で、夕食をバカみたいな量作ってたから、「ひとりで食べるの!?」と話しかけました。そしたら、「ラマダンで日中は食事できないから」って言われまして。
それまで、イスラム教には『ラマダン』という教えがあるのは、知識として知っていました。
でも、本当に実行している人たちの存在は意識したことがなかったんです。「マジでやってるんだ……」って驚きました。
そんな小さな体験も、多様性を感じるきっかけになるのです。
それで、「どこ出身?」って聞いたんですね。自分が留学生だから、ムスリムの彼もきっと留学生なんだろうって思って。
そしたら「コブレンツだよ」って言われて、「??」ってなったんです。
彼は笑って、「両親はイランだけど、僕は生まれも育ちもドイツのコブレンツ。君は?」と言ってくれました。
そうか、白人じゃないドイツ出身者もいるんだ。生まれも育ちもドイツのムスリムもいるんだ。
ドイツに行ったときは「移民」や「宗教」なんてのもたいして考えたことがなくて、なんの知識もありませんでした。
でもさまざまな生き方をしている人、さまざまな背景をもっている人に触れて、「いろんな人がいる」という当然のことに気づかされたんです。
考えを言葉にして伝える大切さ
とまぁもう文化や民族なんてものがグダグダ混ざり合ってますから、ドイツではちゃんと言葉にしないとなにも伝わりません。
日本的な「日本人ならみんなもってる暗黙の了解」なんて成り立ちませんから。
「本当にそれでいいの? 日本人はNOって言うのに遠慮があるかもしれないけど、ちゃんと言ってくれないとわからないよ」
「楽しくない? ちがうところに行く?」
「納得いかないから説明してほしい」
みたいな。
日本では考えてることを行動として示す、たとえばなにも言わずそれとなく気遣うとかってことが多いけど、ドイツでは口に出すんですね。
それによって衝突することはあるけど、言葉にして伝えれば分かり合えることの方が何倍も多い。それを学んだし、伝えるって大切なことなんだなぁと思いました。
「当然」が成立しない世界での生活
こういった経験をして思うのが、「当然」のことなんてないってこと。
電車が時間通りにこない。宅配が来ない。なにかわからん野菜。突然始まる路上での言い合い。ナチュラルにアジア人を見下す人。進まない手続き。どうしたらいいかわからない。なにもわからない。
いろんな髪の色、肌の色の人がいて、いろんな言語を母語としている人がいて、いろいろな宗教が信仰されていて、日本とはなにもかもがちがう。
もちろんそれは不便だし、時には理不尽で悔しい思いをしたこともありました。でも、そりゃそうですよね、わたし、外国人だもん。
日本にいたら、日常生活で会うほとんどの人が日本人の両親から生まれて日本で育った日本人。黒髪で、日本語を母語としていて、礼儀作法や言葉遣いなんかもみんな「当然」の共通事項として理解しています。
でも、それがぜーんぶひっくり返るんです。そしたら、「これが当然」っていうものなんて、世の中にはほっとんどないんだなぁって気づかされました。
自分が思ってる「ふつう」っていうのは、全然普遍の価値観じゃないんです。
ただひたすら楽しかった思い出
そして一番大事なこと!
留学時代!! 超絶楽しかった!!!
こう言い切れる時間って、人生のなかでもそんなにないと思うんです。そりゃあ人並みに悩んだりもしたけど、でもやっぱり楽しかった思い出のほうが何倍も強く心に残ってるんですね。
ドイツ語がヘタで落ち込んでいても「もう一回言って!次は理解するから!がんばってみて!」って言われたり。
「ドイツではわたしが家族だから、なんでも言っていいんだよ」と言われたり(なお、その後ケンカして絶交するもよう)。
いまも付き合ってる彼と出会ったり。
単純に、楽しかった。これってなにより大切なことだと思います。
キラめいていた学生生活に心当たりはないのですが、留学時代は青春してたなーって思います。
勉強して、遊んで、経験する。最高の日々でした。
留学経験がその後の人生を左右するかもしれない
留学を勧める人がたくさんいるからうんざりするかもしれないけど、やっぱり留学はいろんなメリットがあります。
とか言いつつ、たいていの人は留学中、一回くらいは心が折れます。本気でやればやるほど、自分の無力さや文化のちがいに直面して、どうしたらいいかわからなくなっちゃう。
でも、それをどうにかこうにか乗り越えて、結果的に「楽しかった」に行き着くんですよね。
留学すればだれもが劇的に人生が変わるわけではないけど、留学中に経験したことが、その後の人生の糧になることはまちがいないです。
留学を迷ってる人がいたらぜひ挑戦をしてみてほしいし、せっかくなら楽しんでほしい。
留学の話を受けるか蹴るかで迷ったわたしは、「行ってよかった」と、心から思ってます。