先日、ドイツの病院で甲状腺摘出手術を受けました。せっかくの珍しい?体験をしたので、ドイツの入院&手術の全記録を残しておきます!
※あくまで個人の体験談であることをご了承ください。
甲状腺摘出手術にいたるまでのざっくりとした流れ
手術へ至った流れをざっくりと書くと、バセドウ病発覚→薬飲んでも良くならず専門医に送られる→やっぱり良くならないので手術を勧められる、という感じでした。
ドイツではまずホームドクターの元へ通い、手に余ると判断されたら専門医を紹介されます。専門医は検査結果などをすべて、ホームドクターに共有しています。
ただ、薬の処方箋はホームドクターしか書いてくれません。薬必要になるたびにホームドクターのところへ行くのですが、メールしておくと処方箋を書いておいてくれるので、受付でもらうだけで済みます。
バセドウ病のガイドラインでは、2年薬を飲んでよくならないとアイソトープか手術の提案をするらしいです。
わたしの場合諸事情がありアイソトープが向いていないこと、ヨード摂取制限が面倒&今後子どもをもつ可能性を考え、手術をすることに。
ちなみに、通院や手術、入院は完全無料
甲状腺摘出は専門の医者じゃないとできないそうで、大学病院を紹介されました。自分で予約をして、ホームドクターからの紹介状(専門医からではない)を持って問診へ。
相手はアシスタントドクターで、手術の概要や後遺症などを説明してくれました。採血をして、とある窓口で麻酔医との面談を予約、別の受付で手術日の予約をします。
ちなみに問診はこの1回のみ。2週間後麻酔医と面談(2分)して、1ヵ月後手術です。ぶっつけ本番感がすごい。
ちなみに手術までの1ヶ月は、変わらずに専門医のところに通います。
手術当日、入院1日目。想定外の放置
午前6時半:手術前にやたらと放置される
朝6時半集合。久しぶりの早起きです。
朝イチでちゃちゃっと手術してくれるのかと思いきや、なんと9時すぎまで待合室に放置!!
なんのために早く起きたんだ!?とソワソワしながら待合室で待つこと2時間半。
やっと空いている病室に通されて、手術着を渡されました。そこでまた放置され、10時ごろ、ベッドに寝かされて移動されます。彼とはここで一旦お別れ。さみしい。
午前11時半:やっと麻酔
移動先は、Aufwachungsraum。麻酔準備の部屋でもあり、手術を終えた人が覚醒するまで待つ部屋でもあるようです。6人部屋で、5人くらいの看護師さん(インターン生含む)が働いていました。
と、ここで問題が。どうやらわたしの血管は見えづらく、針を刺せないとのこと。血を集めるために拳を握って腕をベッドより下に下げ、看護師さんがわたしの手をペちぺち叩き、ようやく針が通りました。
本当は左手にも刺すらしいのですが、わたしの場合「無理だから麻酔後で」とのこと。
痛いよ~。違和感すごいよ~。
そして放置されること小1時間……。11時半になってやっと、麻酔の部屋(手術部屋っぽいところ)に通されました。めちゃくちゃ寒かったです。
そこであらかじめ刺しておいた針に点滴的なものをつなげられ、麻酔を注入されました。ちなみに液体だけじゃなく、マスク(吸引型?)も併用。
このマスクがまた不愉快で、息苦しくてしょうがなかったです。
午後2時:一応覚醒するも、放置される
「日本から来たの? いいね~。日本といえばさぁ」と雑談していたはずが、気づいたら手術、終わってました。
14時、看護師さんの呼びかけで目を覚まします。麻酔前にいたAufwachungsraumという部屋ですね。
意識がぼんやりしているからか、痛みはたいしてありませんでした。ただひたすら眠くて、再び意識を失ったみたいです。
ちなみに声は出ず、体もほとんど動かない状態。メガネがないのでなんも見えない。(裸眼は0.05程度)
午後4時半:目が覚めるも心配で震える
次に目を覚ましたら、すでに16時半。手術は1、2時間だと聞いていたので、彼や両親がめちゃくちゃ心配してるんじゃないかといてもたってもいられなくなります。
(彼と別れたのは朝10時)
どうやら、ベッドを運ぶ人が忙しく、本来15時に病室へ戻る予定が16時半になっても運ばれずに放置されてたそうで。
まぁわたしが寝てたからっていうのもあるだろうけど。
痺れを切らした看護師さんが「いつ来るの!? いいよもう、俺が運ぶから!!」と言って病室に運んでくれました。な、なんかごめんな。
午後6時:やっと意識が回復
17時ごろ病室に運ばれました。病室は2人部屋で個別のバスルーム(トイレとシャワー洗面台)があり、2人のあいだにカーテンはありません。
ここで彼と再会、安心したのか再びうとうとと……。
完全に目が覚めたのは、18時ごろでした。とはいえまだ体はまったく動かず、声もささやき声しか出ません。
震える手でスマホに「親に連絡してくれたか」と打って彼に聞くと、「大丈夫だよ」と。 やっと安心できました。
こまごましたことをお願いして、彼は19時半ごろ家路へ。朝6時半集合で19時半って……。ごめんな、ありがとう。
「手術の日の夜ごはんをふつうに食べる人もいる」と聞いていましたが、絶対噓だろ?って感じの体調。
水を飲むのを許可されたのすら21時、看護師さんにコップをもってもらったうえストローで飲むのがやっとでした。
手足のしびれがすごくまともに手を広げられない&しょっちゅう足がつってしんどいことを報告。
甲状腺摘出後は、副甲状腺がうまく働かずカルシウム欠乏に陥ることがあるとのこと。対策として、カルシウムグミのようなものをもらいました。おいしい。
2日目、身動きできないうえ声もでない
朝:無茶ブリすぎる朝食
朝ご飯、これ。まじでこれ。1日半絶食していまだに体を自力では起こせない患者に対する朝ご飯が、これ。喉がつっぱって口開かないし、パンちぎる力ないし、飲み込めない。
食えねーよ
ちなみにこの段階では、首から管(出血対策)と、腕(麻酔前に刺した針)から水分を補う点滴がつながっていました。
いつになったら取ってもらえるのか聞こうと必死で手を上げて看護師の前でひらひらすると、イケメン看護師は笑顔で「またね」と手を振りかえして出ていきました。
声だせないってつらい。
そして、今日は医者の診察があるとのこと。
実はまだ一度も医者と会ったことがないので、「お礼を言わなくては!」とちょっとドキドキして医者を待つ。が、午前中は来なかった。
昼:彼に手助けされて顔を洗う
昼に彼が来てくれて、介助してもらいつつ、やっとの思いで顔を洗うことに成功。
そして、看護師さんから「明後日声帯検査がある」ことを聞きます。声帯検査は同じ病院のちがう棟。
「たぶんいいと思うけど、声帯検査に関してはドクターに聞いて。今日来るから」
「わかりました」
だがしかし医者は来ない。17時ごろもう一度確認してみると、「土曜日は忙しいからしかたない」とのこと。なんだそれ。
夜:やっと自力で起き上がることに成功
そして、衝撃の夜ごはんがコレでございます。
朝ごはんやん! こんなん元気になりようがないやろ!!
トマト切るほどの力もねーよ
20時ごろ、やっと自力で起き上がれるまでに復活。とはいっても、起き上がって、休んで、立ち上がって、休んで、っていう感じです。明日退院やぞ、これでええんか?
「明後日声帯検査あるんで、1日退院のばせませんか?」ともう一度聞いてみました。
すると看護師さんは笑いながら、「だいじょーぶよ、追い出したりしないから」とすげぇ適当に返してくる。
明日退院予定やぞ、本当にええんか?
ちなみに声は、大きい声は出せないものの、小声で会話できるくらいには回復。
ただ、まだ飲みこむときにちょっと痛みがあるのと、痰がからむけどうまく咳ができなくてイガイガした感じがありました。
3日目:退院の準備を万全整えるも不発
朝、首につながっていたチューブをやっととってもらえました。そして特に説明もなく急にはさみを出され、突然糸を抜かれました。抜糸、0.2秒で終了。
ガーゼを張り替えてもらうも、数本髪の毛が挟まってて気持ち悪い。看護師さんを呼んで「取り替えてください」と言うと、はさみで髪を切られました。
髪って雑菌とかないの?3日洗ってないよ?
そこからちょっと手伝ってもらいながら、かんたんにシャワーを浴びる。髪を乾かす体力がないのでちょっと汗を流しただけだけど、超絶さっぱり。
……さて突然ですが、3日目と4日目の昼食を比べてみましょう。
3日目→肉+じゃがいもの練りもの+カリフラワーのチーズかけ
4日目→肉+じゃがいも+カリフラワー
あのさぁ…。なんならランクダウンしてるやんけ
ちなみにこの時点で、入院延長の許可はとくにもらってません。まぁなにも言われんからええやろうなぁという感じで居座ってました。そもそもまだフラフラだし。
カルシウム欠乏による手足のしびれは一向によくならず、薬をちょっと強めのやつに変えてもらいました。
夜ごはんは相変わらず、見た目ほぼ朝ご飯。鶏肉は味ナシ&冷たい。つらい。
4日目:とくにすることもないのでケーキを食べる
何度声帯検査の時間を聞いても「わからない」と言われていたのですが、9時ごろ「いまから」と言われ、追い立てられるように移動。
ファイル渡され、「行け」と言われた建物は徒歩10分以上かかる棟。わたしフラフラなんだけど、これひとりで歩いていくのか……。
休みつつもたどり着き、声帯検査は問題なく終了。一眠りしたあと彼が来たので、退院の準備を済ます。やっと帰れるぅー!!
だがしかし昼前にお医者さんがやって来て、「カルシウム欠乏だね。命の危険があるから家には帰らせられないよ。じゃあ」と言いたいことだけ言って立ち去ってしまいました。
退院準備万端だったのに…(しゅん)
その後、カルシウムを点滴することに。いやいや、わたし術後からずっと手足がしびれるしつるって言ってたじゃん。いまさらかよ。
なんかもうイヤになって、彼と下のカフェでケーキ食べてました。
はい、これ夜ごはんね。相変わらずだよ!!
ちなみに、大学病院だからかインターン生がめちゃくちゃ多い。
それはいいけど、血圧測ったりする子、まだギムナジウム生(高校生)で、社会経験のために夏休みボランティアで病院来てる子だったんだけどええんか……?
ちなみに夜勤は医学部1年生の青年(少年?)でした。まぁステーションには看護師さんがいるけどさ。
5日目:針が刺さったままベッドから追い出される
5日目の朝食中、看護師さんが現れ、採血されました。せめて食前か食後にしてくれよ……。ちなみに朝食は初日から変わらず丸いパンな。飽きるわ。
その1時間後、カルシウムの値が少しよくなっていたので、退院の許可が下ります。
ホームドクターに提出する用に、症状や現在の様子、必要な薬などがすべて書かれている紙をもらいます。
やっと退院だー。彼が来るまでぼちぼち準備するかー!と荷造りするわたし。
「彼があと1時間くらいで来るので、そしたら出ます」
「すぐにベッドを開けてもらえない? 1時間なら、待合室で待っててください」
「えぇ……。あの、腕にまだ針が刺さってるんですけど」
「退院するまでなにがあるかわからないから、彼が迎えに来たときに取ります。声かけてください」
「あの、退院後気を付けることとかなにも聞いてないんですけど」
「それはわたしの担当じゃないので、違うステーションへ聞きに行ってください」
嘘のような本当の会話。この会話の10分後、針が刺さったまま待合室に追い出されました。
そのくせ小1時間して、「もういいでしょ」と結局針を抜かれたんだけどね。もう意味わからん。
その少し後に彼が来て、一緒に違うステーションへ行って、気を付けることなどを質問。「カルシウムには、バナナや牛乳がいいわよ!」とのこと。
じゃあなんで5日間くれなかったんだ?
ちなみに、一度も寝具は交換してもらえませんでした。ずーっと同じシーツ、枕、毛布です。超気持ち悪かった。
退院後の様子
※この段落には傷口の写真があります。グロくないけど一応注意喚起
驚くことに、病院は処方箋を出してくれません。ホームドクターじゃないとダメなんだそうです。
自宅へ戻り休んだ後、ホームドクターのところへ行って処方箋をもらいました。30℃の炎天下だぜ……。処方箋くらいくれたっていいじゃねぇか……。
退院したとはいえ手足のしびれはまだ続いていて、当日と翌日はのんびりしていました。カルシウムの薬、胃に悪いらしい。気持ち悪い……。
退院3日後から徐々に料理したりメールチェックしたりができるようになった感じです。でもまだつらい。
↓手術10日後の写真(現在)
傷口にはテープが貼られていて、手術後10日間はこのままなんだそうです。その後、シャワーを使えばすぐにはがれるんだとか。
裏を返せばそれまで濡らしちゃいけないってことなので、シャワーは慎重に、汗をかくほどアクティブなことはしないように気をつけています。
とまぁこんな感じ!
あくまでわたし個人の体験談であり個人差があるものではありますが、ドイツでの甲状腺摘出手術&入院生活のサンプルのひとつとして記録しておきます。
家族や友だち、彼はもちろん、医療従事者の方々に感謝。健康は大事!!