『男女平等』の話になると、「進んでいる」と思われがちなのがヨーロッパ。2017年のジェンダーギャップ指数では、ドイツは12位、日本は114位でした。この統計について言えば、差は歴然としています。
そんな状況のなかで、「男女平等を唱えるくせに男が女におごるのはおかしい」という意見をちらほら見かけます。そして、「ヨーロッパでは割り勘がふつうだぞ」と。
では割り勘が当然なドイツは、「男女平等」のために割り勘しているのでしょうか?
会計の仕組みがちがうドイツと日本
そもそも、ドイツと日本では会計の仕組みがちがいます。日本では
1.「お会計お願いします」と言ってレシートをもってきてもらう→お金かカードを挟んで店員にわたす
2.直接レジに行ってお金を払う
のどちらかですよね。
ある程度以上のランクになれば「1」、ふつうの居酒屋やレストランなんかでは「2」が多いです。
「1」にせよ「2」にせよ、基本的に支払いは一緒になります。
割り勘にする場合、すでにテーブルである程度お金のやりとりをしておいて、だれかがレジでまとめて払わなきゃいけません。
でもドイツでは、支払いはテーブル会計が基本。
「会計お願いします」と言うと会計係が財布をもって現れ、「一緒に払いますか、別々ですか」と聞きます。
別々に払うときは、「コーラ2杯とボロネーゼ」と頼んだものを言えば、店員が計算してくれます。
驚くことに、手書きで筆算する店員が多い。値段覚えてるんだよ、すごいよね。
とまぁこんな感じで、そもそも会計の仕組みがちがうのです。
シェア文化がないドイツ
そしてドイツでは、別々に払う=男がケチという印象はありません。自分が飲み食いしたものを払うのが当然で、なんでそれでケチって思われるの?的な感じです。
でもここでもまた、文化のちがいを感じます。
そう、ドイツは日本ほど食べ物のシェア文化がないのです。
日本って、食事をシェアするのが前提、みたいなところあるじゃないですか。居酒屋とか。
「だれが唐揚げを何個食べた」なんて計算しませんよね。したらケチくさいですよね。
でもドイツでは、食べ物のシェアをほとんどしません。まぁたまーに「一口試す?」みたいなやり取りはあるけど、日本のように小皿が出てきて取り分けて食べましょう、みたいなことはあんまりやりません。
(複数人にむけた大皿料理は別だけど)
つまりドイツでは、だれが何を食べて飲んだのかが明確なんですね。
そして本人も、「ビールを3杯とワインを1杯飲んだ」とちゃんと覚えてます。だから、「自分で食べた、飲んだもののぶんを払う」という認識になるんだと思います。
「割り勘」するから「男女平等」なのか
んで、本題。「割り勘」すれば「男女平等」なのかって話。
たしかにドイツでは、「男がおごる」前提ではありません。
がしかし、それなりのランクのディナーに行けば、店員は「会計は一緒ですか、別ですか」なんて野暮なことは聞きません。エスコートする側の男性が払うのが当然だから。
高級ホテルでコースディナーを食べて「別々で」なんて男性、さすがのドイツでも「ちょっと」となります。
っていうか高いお店なら、店員だってレシートを真ん中にポンとは置きません。男性側に向けて渡します。
実際、欧米(っていうかアメリカ)の映画を見ても、ドレスコードがあるような場面では、必ず男性が店員を呼び、お金を払ってますよね。
女性が店員を呼びつけて財布を出して会計したりしませんよね。
街のふつうのレストランでも同じで、彼と食事をしているときに「会計は一緒で」と言うと、彼のほうにレシートを渡されることが多いです。
わたしが払うときはわたし自身が「会計お願いします」と言い、財布を構えておきます。そうするとわたしの方にレシートを渡してくれるから。
つまりドイツでは、別々に払うのが社会的に認められてはいるが、一緒に払うのであれば男が金を出すという認識があるのです。
男女平等なのにレディーファースト
考えてもみてください。たしかに、ドイツをはじめとしたヨーロッパでは、『男女平等』が重視されています。
しかしその一方で、レディーファースト、つまり男が女をエスコートする文化も根付いているのです。
男女で歩いていたらドアを開けるのは男。後ろに女性がいたら開けて待つ。レストランに入るのは男から。電車に乗るときは女から。
スーツケースをもって電車に乗るときはそばの男性が助けてくれるし、精肉店で「どっちが先に注文する?」となると、男性はみんな譲ってくれます。
たぶんドイツはイギリスやイタリアなんかよりも緩いと思うけど、これくらいはだれでもやってくれます。
さて、『男女平等』を謳うヨーロッパが『レディーファースト』するのは、なんか矛盾してる気がしますよね。
日本だったら、「男女平等って言うくせに重いものを持つのは男の仕事? ふざけるな」「男女平等ならレストランのソファ席に男が座っても文句言うな」という話になりそうです。
でも、『男女平等』を掲げるヨーロッパ、というかドイツでは、そういった不満をあんまり聞きません。
エスコートは男の『格』なのかもしれない
わたしは男じゃないのであくまで女目線の実感にはなりますが、女性をエスコートするのって、「男がへりくだる」んじゃなくて、「男としての格を見せる場」っていう認識があるんじゃないかと思います。
わたしのまわりには、ドアを開けたり女性にソファー席を譲ったりすることをイヤがる男性はいません。
というか、スマートにそういうことするのが男の美学的な印象を受けます。
ドイツは日本よりも階級社会です。女性をいかにエスコートするのかが男の『品格』の見せ所であり、それができなければ「クソダセェ男」になります。
「なんで女に尽くさなきゃいけねーんだよ」ではなく、「女をエスコートできる男(自分)は価値が高い」と見なしている気すらします。
ドイツでは立ち居振る舞い、政治議論での返し、言葉の選び方などで、相手の「社会的レベル」が割とわかっちゃいます。
そしてある程度のレベルの男性であれば当然女性をエスコートするし、その一巻としてお金も払います。
逆に女性は優雅でセクシーな言動、堂々としたたたずまい、知的ユーモアのある返しなんかでレベルを測られたりするんですね。
だからわたしは、ガチな社交場は大嫌いです。でもカップル参加が当然なので彼が行く以上行かないわけにもいかず……。
そういう場で、エスコートされて慌てたらクソダセェ女になります。それが女の『品格』ですから。
割り勘をすれば男女平等というわけではない
そもそも日本とドイツでは会計の仕組みがちがうし、食事の楽しみ方もちがうし、レディーファーストについての考えもちがいます。
だから、「ドイツでは割り勘がふつう」「さすがジェンダー意識がちがうんだね!」というのは、個人的にはちょっとちがうんじゃないかなぁーなんて思うわけです。
むしろそれなりの場では、日本よりもっとあからさまに男女の役割が定められています。
たとえふつうのレストランであっても、レジ会計が一般的で個人がなにを食べてなにを飲んだかがわからないような状況になったら、ドイツでも男性が多く払うと思うんですよね。
なんやかんや言って、男女の食事(デート)で細かいお金のやり取りをするのは、ドイツでもあんまりカッコイイことではありませんから。
たとえばカウンターで飲み物を注文する形式のバーで飲んでたら、男性が自分の飲み物を買うついでに女性の飲み物も買ってきてくれることがあります。
「いくらだった?」と聞いても「別にいいよ」みたいな。「まとめて払っとくから」とか。
「ドイツじゃ男は女におごらない」なんて言う人がいますが、手間を省いたり、エスコートしたりするときは、払ってくれることももちろんあります。
テーブル会計の際に別々に支払うことが可能でありふつうであるとはいえ、「割り勘するから男女平等」ってのはちょっとちがうんじゃねーの?というお話でした。