最近、オンラインサロンなるものが注目されています。オンラインサロンとは、かんたんに言えば、インターネットコミュニティ&塾って感じです。たとえば「ブログ初心者がブログで稼ぐためのサロン」や「起業家がノウハウを教えるサロン」「きれいになりたい女性のサロン」なんかがあります。
オンラインサロン自体は悪いものではありません。でもわたしは、ここまでオンラインサロンがもてはやされるのは、日本は健全な市民コミュニティが少ないからなんじゃないか、と思うわけです。
オンラインサロンの現状
オンラインサロンは賛否両論でして、わたしはざっくり言えば『否』側にいます。というのも、オンラインサロンっていい値段とるんですよ。月5000円~1万くらい、高いのになると3万とかね。
その会費を払うとオンラインのグループに参加できて、記事を読んだり運営者とコンタクトをとったりできる仕組みになっています。
で、サロンを作る人の多くは、インフルエンサーと呼ばれるネットで影響力をもっている人。入るのはそのファンや信者。鍵がかかったグループなので、外からはどんな内容なのかをチェックすることはできません。はあちゅうさんのオンラインサロンをのぞきましたが、あまりにひどいのでこきおろし記事を書いたくらいです。
要は、オンラインサロンが有名人のお小遣い稼ぎというポジションになってしまっているのです。
もう一度書きますが、わたしがオンラインサロンを毛嫌いする理由は、はあちゅうさんのオンラインサロンの内情を見てくださればわかると思います。
→『ちゅうつねカレッジの評判!2時間で退会を決意した3つの理由』
ほかにも、会員をタダ働きさせまくってると告発されたSNSのヒロインや、オフ会(直接会う会)でセクハラまがいが起こったとある界隈など、いろいろ問題が指摘されています。
無責任でクローズドなオンラインサロン
たとえば芸人のアンジャッシュ渡部さんがおいしいレストランを紹介するサロンは、月5000円で参加者は330人くらい。管理はアウトソーシングしているのでしょうが、単純計算で毎月150万円くらいの利益が上がるわけですね。
そこらへんのブロガーなんて、自分がちょこっと成功しただけで意気揚々と「ブログ指導」を謳ってサロン作っちゃいます。
もちろん、目的がハッキリしていて、モチベーションが高いコミュニティもあります。でもサロン運営者はあくまで素人が大多数。大人数のコミュニティの管理ができず自然消滅したり、値段に見合うノウハウを提供していなかったりします。
自分が提供するノウハウは再現性があるのか? 客観的データや論理に基づいているのか? 結果がでなければ責任をとる覚悟があるのか? そもそも運営者の実績は信頼できるのか?
そういう話になると、「自己責任」「いちいち聞かずに自分で行動しろ」などと言う運営者が多いのも事実です。ノウハウ売ってるくせに結果を約束しないとかクソかよ、って思っちゃうんですね。
そしてこんな無責任であいまいな有料コミュニティに多くの人が殺到する現状は、あんまり健全ではないんじゃないか、と思うわけです。
なぜオンラインサロンに需要があるのか?
そこいらの人が立ち上げた毒にも薬にもならないような薄っぺらいサロンに、多くの人が集まる現実。それはなぜなのか。
理由は、日本には健全な市民コミュニティが少ないからじゃないかなぁと思うのです。
ドイツにはフェアアインという市民クラブのようなものがあって、陶芸やワイン好き、写真撮影、サッカー、野球、ラクロス、ハンドボール、吹奏楽、賛美歌……地域ごとに山ほどクラブがあります。
興味のあるクラブに行けば、同じ趣味を持つ10代~80代(クラブによる)が一緒に活動しています。参加費もたかが知れているし、多くのフェアアインはちゃんと公的に登録していて、会員定款もあります。
ほかにも、ボランティアや保険が効くヨガコースとか、いろんなコミュニティがあります。言わずもがな、宗教もね。あと、公的機関が運営している市民の学校もあって、語学や歴史などを格安で学ぶことができます。
でも日本って、こういう市民コミュニティの存在感が薄いですよね。まぁ一昔前は企業がコミュニティのすべてだったんだろうから、必要がなかったのかもしれないけど。
ドイツが州立国家で人口が比較的ばらけていること、そもそも市民活動が盛んなこと、部活がなくて学校の体育館が夜空いていること、夜時間がある社会人が多いことなど、フェアアインを可能にしているドイツならではの理由もあります。だから、「ドイツの方がいい」って話じゃなくて。
ただ、健全な市民コミュニティがあったら、しょーもないオンラインサロンなんて見向きもされないだろうに、って思うんですよ。
健全な市民コミュニティが求められる現代
現代では企業に対する帰属意識が薄れているうえ、ネットで個人として活動する人も増えたので、コミュニティに飢えている人が多いんだと思います。そこには「群れたい」という願望より、「独りぼっちになりたくない」という不安があるような気がします。
もちろん、「同じ目標をもつ人と高め合いたい」とか、「この人が運営するコミュニティに入りたい」とか、そういう人もいるでしょう。でも結局のところ、どこかの集団に所属したほうが安心、さみしくないってやつだと思います。
それが悪いってわけじゃありません。社会のなかで生きる人間がコミュニティに所属したがるのは、当然だと思います。
でも問題は、日本には『健全な市民コミュニティ』があまりにも少なく、責任の所在があいまいなくせに結構なカネをとる『オンラインサロン』がポジションを獲得してしまったこと。
オンラインサロンが悪いってわけじゃないんです。ただ、ビジネスにしちゃ脆弱、無責任すぎるサロンが目立ってね。公的で透明性のある、第三者の目が届く健全な市民コミュニティがあれば、クソみたいなオンラインサロンなんてすぐ消滅するだろうになぁ~って思います。
っていうか消滅してくれよぉ~。こすいカネ稼ぎしてる人なんて見たくねぇんだよぉ~。
居場所を求める人々が行きつく先
昔みたいに、『家族』『企業』といった、自分が所属できる枠組みがずいぶんあいまいになってきました。そんななかで、自分の身を置ける居場所を求めるのは当然の動きです。とくに、ネットでだれとでもつながることができる現代であれば、なおさら。
そしていま、居場所を求める人の受け皿となっているのがオンラインサロンなのでしょう。サロンメンバーはだいたい似たような境遇な人になってくるでしょうから、心地いいでしょうしね。
でもさぁ……やっぱり健全なコミュニティも選択肢としてあるべきじゃない!?
いや、オンラインサロンがあってもいいの。オンラインサロンに入って楽しんでいる人がいるのも別にいいの。ただ、オンラインサロンってほぼ無法地帯なものだからさ。そんなところに居場所を求める人がたくさんいる現状ってどうなのかなって。ほかの選択肢が少なすぎるのはどうなのかなって。そう思っちゃうわけ。
これはまた別に書くけど、日本人にとってタテの関係性が心地いいから、「教えてもらう」のは楽なのかもしれないね。
ま、オンラインサロンに入るならいろいろ覚悟したうえで「自己責任」って話!